さっきまで、げらげら笑ってたのに。
彼のグラスを持つ手が、ふと、止まった。
目のふちが、じわっと、赤い。
え、どうしたの。私、何か言った?
いや、なんか、急に…って、声が、湿ってる。
居酒屋の、がやがやした音の中で、そこだけ、時間が、止まったみたい。
ついさっきの、あの笑顔は、どこ行ったの。
おしぼりを、そっと差し出しながら、内心、たじろぐ。この涙、どう受け止めるのが、正解…?
楽しく飲んでたはずなのに、相手が、急に、涙ぐむ。ぎょっとするよね。何か、地雷を踏んだのかな、って、こっちまで、心臓が、ばくばくする。酔って泣く人って、正直、どう扱っていいか、分からない。
酔うと泣く人は、振られっぱなしの炭酸ボトル
酔って泣かれると、扱いに困って、めんどくさいな、って思っちゃうこと、あるよね。
フタを開けた瞬間に噴き出すのは、前から溜まってた中身
炭酸のボトルを、イメージしてみて。カバンの中で、ずっと、揺られて、振られ続けてたやつ。中は、ぱんぱんに、炭酸が、溜まってる。でも、フタが、閉まってるうちは、静か。何事も、ないふり。
そのフタを、ぷしゅっと、開けた瞬間。中身が、ぶわっと、噴き出すでしょ。あれ、フタを開けた行為が、炭酸を、作ったわけじゃ、ないの。炭酸は、開ける前から、ずっと、中に、溜まってた。フタが、フタをしてただけ。
酔うと泣く人の、涙も、これと、まったく同じなの。お酒が、涙を、作ったんじゃない。しらふの時、ずっと我慢して、溜め込んでた感情が、お酒っていう、キャップ外しで、一気に、噴き出しただけ。噴き出したのは、もとから、その人の中に、あったものなんだよね。
涙は酒のせいじゃなく、普段の我慢が炭酸を溜めてる
ここ、はっきり言うね。炎上、覚悟の上で。
酔って泣く人は、情緒不安定なんじゃない。むしろ、逆。普段、感情に、固く、フタをしすぎてる人。
だってさ、考えてみて。しらふで、ちゃんと、泣きたい時に泣けて、言いたいことを言えてる人。そういう人は、そもそも、炭酸が、溜まらないの。こまめに、ガスが、抜けてるから。お酒で、キャップが緩んでも、ぷしゅ、って、軽く、抜ける程度で、噴き出したり、しない。
噴き出すほど、溜まってる、っていうのは、しらふの毎日で、それだけ、我慢を、重ねてるってこと。泣くのを、こらえて。しんどいのを、隠して。強がって。その、日々の我慢が、しゅわしゅわ、炭酸を、溜めてるの。涙は、酒癖じゃなくて、我慢の、証拠なんだよ。
居酒屋で、私が噴き出した夜
私、この、噴き出す側、なの。
昔、仕事で、限界まで、我慢してた時期があってさ。誰にも、弱音を吐かず、平気なふりを、し続けてた。そんな時、友達と、飲みに行ったの。楽しく、笑ってたはずなのに。ふとした、何気ない一言で、目の奥が、ツンとして。気づいたら、ぼろぼろ、泣いてた。自分でも、びっくりするくらい。
正直に、あの時の頭の中を、晒すね。(え、なんで、私、泣いてるの…?)って、自分が、いちばん、戸惑ってた。悲しい話なんて、してなかったのに。あとで、分かったの。あれは、酒が、作った涙じゃない。普段、フタをして、溜め込んでた、しんどさが、お酒で、キャップが緩んで、ぷしゅっと、噴き出しただけ。あの噴き出す感覚、忘れられないわ。
なぜ、酔うと涙が噴き出すのか
じゃあ、なんで、お酒を飲むと、フタが、緩むのか。中身を、開けてみるね。
しらふのフタが、お酒で、ゆるむから
私たちの頭の中には、感情に、フタをする、ブレーキみたいな部分が、あるの。人前では、泣かない。しんどくても、笑っておく。そういう、自制心の、キャップ。
お酒はね、この、キャップを、ゆるめる働きが、あるの。飲むと、理性の、ブレーキが、ふわっと、外れる。だから、普段なら、ぐっと、抑え込んでる感情が、するっと、表に、出てきちゃう。楽しい人は、もっと、陽気になるし、怒りっぽい人は、絡み出す。そして、我慢を溜めてる人は、涙が、あふれる。
お酒が、新しい感情を、生み出してるんじゃないの。もとからあった、フタの下の中身を、ただ、解放してるだけ。だから、酔って出てくるものは、その人が、しらふで、必死に、隠してたもの、なんだよね。
泣くのは、悲しいからとは、限らない
勘違い、しやすいから、言っておくね。酔って流す涙って、必ずしも、悲しみの涙じゃ、ないの。
中身は、いろいろ。ずっと、張り詰めてた緊張が、ほどけた、安堵の涙。溜まりに溜まった、疲れが、あふれ出す、涙。人といるのに、ふと、感じてた、孤独の涙。誰かに、分かってもらえた気がして、こみ上げる、涙。昔を、思い出しての、涙。
だから、酔って泣いてる人を見て、何か、悲しいことがあったんだ、って、決めつけなくて、いいの。その涙は、悲しみとは、限らない。ただ、フタの下に、溜まってた、いろんな感情が、まとめて、噴き出してる。その、中身は、本人にも、うまく、言葉にできなかったり、するんだよね。
普段、我慢しすぎてる人ほど、よく噴く
だからね、酔うと泣く人ほど、普段は、しっかり者だったり、する。
まわりに、気を遣って。弱いところを、見せなくて。いつも、笑顔で。頼りに、される人。そういう、しらふで、フタを、きつく締めてる人ほど、炭酸が、溜まりやすいの。で、お酒で、緩んだ瞬間、その反動で、ぶわっと、噴き出す。
普段、へらへら、感情を、垂れ流してる人は、案外、酔っても、泣かないんだよ。だって、日頃から、ガスが、抜けてるから。噴き出すほど溜まってるのは、それだけ、しらふで、頑張ってる、証なの。酔って泣く人を、弱い人、って見るのは、まるで、逆。ほんとは、我慢強い人、なんだよね。
酔って泣く彼を、面倒と切り捨てないで
もし、あなたの、彼氏や、気になる人が、酔うと泣くタイプなら。ここ、大事だから、聞いて。あの涙を、面倒だ、って、切り捨てないでほしいの。
あの涙は、しらふでは絶対、見せない本音
考えてみて。彼が、酔って、こぼした涙。あれは、しらふの彼が、フタをして、あなたにすら、絶対、見せない、本音の、中身なの。
男の人って、とくに、弱いところを、見せちゃいけない、って、育てられてたり、するでしょ。泣くな、強くあれ、って。だから、しらふでは、きつく、キャップを、締めてる。その彼が、お酒で、緩んで、あなたの前で、泣いた。それは、彼が、いちばん、隠してる、やわらかい部分を、見せてくれた、瞬間なんだよね。
その、貴重な中身を、面倒くさ、酒癖悪い、って、フタを、乱暴に、閉め直したら。彼は、二度と、あなたの前で、フタを、開けなくなる。あの涙は、扱いに困る、厄介ごとじゃなくて、彼の、本当の姿への、入り口なの。
でも同時に、あなたに素を出せてないサインでもある
ただね。ちょっと、痛いことも、言うね。覚悟して、読んで。
彼が、酔わないと、泣けない、本音を出せない、っていうのは、裏を返すと、しらふのあなたには、素を、見せられてない、ってこと、でもあるの。あなたの前で、自然に、弱音を、吐けてたら。そもそも、酒の力を、借りる必要は、ないんだから。
これは、彼が、悪いとか、そういう話じゃ、ないの。ただ、二人の関係が、まだ、彼が、しらふで、フタを、開けられるところまで、来てない、ってことなんだよね。酔って泣く彼を、受け止めることと、同時に、しらふでも、彼が、素を、出せるような、安心できる関係を、育てていく。その、両方が、大事なの。酔った時だけ、本音、っていうのは、ちょっと、さみしいからさ。
泣かせ上手じゃなく、聞き役に徹する
じゃあ、目の前で、酔って、泣かれたら、どうするか。フタを、閉め直そうとするのも、根掘り葉掘り、聞き出すのも、どっちも違うと思うの。
フタを、閉め直そうとしない
まず、やっちゃいけないのが、これ。泣かないで、とか、どうしたの、しっかりして、って、慌てて、涙を、止めようとすること。
それ、噴き出してる炭酸に、慌てて、キャップを、押し込もうとするのと、同じなの。無理やり、閉めたら、余計に、中で、圧が、かかって、苦しくなる。せっかく、フタが、緩んで、溜まったものが、抜けようとしてるのに、それを、止めちゃう。
泣きたい時は、泣かせて、いいの。無理に、笑わせたり、話を、そらしたりしないで。ただ、うん、うん、って、隣で、聞いてあげる。噴き出すものは、噴き出しきったほうが、スッと、楽になるんだから。フタを、閉めるんじゃなくて、全部、抜けるまで、そばに、いてあげて。
中身を、あとで蒸し返さない
もうひとつ、大事なこと。酔って、泣きながら、話したことを、しらふに戻ったあとで、蒸し返さないこと。
あの時、ああ言ってたよね、とか、こないだ、泣いてたのは、あれが、原因なの、とか。これ、やられると、本人は、うわ、ってなるの。フタが、緩んでる時に、こぼれた中身を、しらふの時に、突きつけられると、恥ずかしくて、いたたまれない。次から、あなたの前で、絶対、飲めなく、なっちゃう。
酔って、見せてくれた涙は、そっと、心に、しまっておく。翌朝は、何も、なかったみたいに、普通に、接する。それが、また、フタを、開けてもらうための、いちばんの、優しさなんだよね。
いつも同じ人・同じ話で、飲むほど荒れるなら
ひとつ、線を、引いておくね。
酔って泣くのが、たまに、なら、ガス抜きとして、むしろ、健康的。でも、もし、飲むたびに、毎回、荒れて、泣いて、記憶をなくすほど、飲んじゃう。涙が、いつも、同じ、つらい話や、同じ人のことばかり。そんな状態が、続いてるなら。それは、ただの、ガス抜きじゃ、なくなってるのかも、しれない。
お酒が、その人の、しんどさを、麻痺させる、唯一の、逃げ場に、なってる可能性がある。そういう時は、あなたが、一人で、抱え込まなくて、いいの。優しく、心配を、伝えて。もっと、深そうなら、専門的に、支えてくれる場所を、そっと、勧めてあげてもいい。お酒で、フタを緩めないと、感情を、出せないほど、追い詰められてるなら、それは、飲み方の話じゃなくて、心の、SOS、かもしれないからね。
もし、あなたが泣く側なら
ここまで、受け止める側の話をしてきた。でも、酔うと泣いちゃうのが、自分、って場合も、あるよね。私も、そうだから、こっちも、ちゃんと、話すね。
酔わないと泣けないのは、我慢のサイン
酔って泣いた翌朝、自己嫌悪で、布団に、もぐりたくなる気持ち、分かる。あんな、みっともない姿、見せて、って。でもね、まず、酔って泣いた自分を、責めるのは、やめてあげて。
だって、それは、あなたが、それだけ、しらふで、我慢を、重ねてる、証拠なんだから。責めるべきは、泣いたことじゃ、なくて、酒の力を、借りないと、泣けないくらい、普段、感情に、フタをしてる、その、しんどさのほう。
酔わないと、本音が出せない。しらふでは、弱音を、吐けない。それって、あなたが、毎日、ぱんぱんに、我慢を、溜めてる、っていう、体からの、サインなの。泣いた自分を、恥じるより、そんなに、頑張ってる自分を、まず、ねぎらってあげて、いいんだよ。
炭酸は、少しずつ、抜いていい
じゃあ、どうすれば、いいか。噴き出すほど、溜め込む前に、しらふのうちに、ガスを、少しずつ、抜いていくの。
しんどい時に、しんどいって、信頼できる人に、言ってみる。泣きたい時に、一人で、こっそり、泣いてみる。我慢してることを、日記に、書き出してみる。何でもいい。フタを、こまめに、ゆるめて、炭酸を、ちびちび、抜いていく習慣を、つけるの。
そうすると、ぱんぱんに、溜まらなくなる。お酒で、キャップが緩んでも、ぶわっと、噴き出さなくて、済むようになる。お酒に、感情の、解放を、任せなくて、よくなるんだよね。酒の力を、借りて、一気に、爆発させるより、しらふで、少しずつ、抜いたほうが、ずっと、ラクだからさ。
噴き出して恥じた私と、彼の涙を受け止めた友人
酔って泣くことを、めぐって、まるで違う、向き合い方をした話。片方は、私の、恥ずかしい過去。
噴き出しては、また我慢を、繰り返した私
さっき書いた、居酒屋で、噴き出した頃の、続き。あのあと、私、どうしたと思う?
翌朝、猛烈な、自己嫌悪。あんな、みっともない姿、見せちゃった、って、頭を、抱えた。で、私が、やったこと。もっと、しっかりしなきゃ、って、フタを、さらに、きつく、締め直したの。しらふでは、これまで以上に、平気なふりを、して。弱音なんて、絶対、吐かない、って。炭酸を、抜くどころか、もっと、溜め込む方向に、いっちゃったんだよね。
結果、どうなったか。次に、飲んだ時、前より、もっと、激しく、噴き出した。溜め込んだぶん、爆発も、大きくなる。ぼろぼろ、泣いて、また、自己嫌悪。で、また、フタを締める。この、悪循環を、何度も、繰り返した。噴き出す→恥じる→もっと我慢する→もっと噴き出す。抜け出せない、ループ。
あの頃、気づいてなかったの。噴き出すのが、問題なんじゃ、なくて、しらふで、溜め込みすぎてるのが、問題だったって。フタを、締めるほど、事態は、悪くなってた。はぁ…あの、爆発を繰り返してた時期、しんどかったな(泣)。
彼の涙を、面倒がらずに受け止めた友人
こっちは、友人の話。彼女の、彼氏が、酔うと、泣くタイプ、だったの。ふだんは、めちゃくちゃ、しっかり者で、頼れる人。なのに、飲むと、ぷしゅっと、フタが、緩んで、涙ぐむ。
最初、彼女も、戸惑ったって。え、どうしたらいいの、って。でも、彼女は、面倒くさ、って、切り捨てなかったんだよね。あ、この人、普段、こんなに、しっかりしてるぶん、しらふで、いっぱい、我慢を、溜め込んでるんだな、って、気づいたの。
だから、彼が、酔って、泣いた時、彼女は、泣かないで、なんて、言わなかった。ただ、うん、うん、って、隣で、聞いた。背中を、そっと、さすって。噴き出すものを、全部、抜けるまで、そばに、いてあげたの。翌朝は、何も、なかったみたいに、普通に、接した。蒸し返したりは、しなかった。
そしたらね。彼、だんだん、しらふでも、彼女に、弱音を、吐けるように、なっていったんだって。酔った時だけじゃ、なくて、普段から、少しずつ、フタを、開けられるように、なった。彼女が、あの涙を、面倒がらずに、受け止めたから。彼にとって、彼女が、安心して、炭酸を、抜ける場所に、なったんだよね。
酔うと泣く人を見ると、つい、情緒不安定なのかな、面倒な人なのかな、って、ラベルを、貼りたくなる。酒癖が、悪いんだ、って。でもね、貼るべきは、そのラベルじゃ、ないの。
酔って泣く人は、情緒不安定なんじゃ、ない。むしろ、普段、感情に、固く、フタをしすぎてる、我慢強い人。涙は、お酒が、作ったんじゃなくて、日々の我慢が、しゅわしゅわ、溜め込んだ、炭酸なの。
フタを、開けた瞬間に、噴き出す中身は、その人が、しらふでは、絶対に、見せない、本音。それを、慌てて、閉め直したり、あとで、蒸し返したりしないで。ただ、隣で、噴き出しきるまで、聞いてあげて。
そして、もし、泣く側が、あなたなら。酔わないと、泣けないほど、我慢しすぎてないか、一回、自分に、聞いてみて。炭酸は、しらふのうちに、少しずつ、抜いて、いいんだよ。
