遠距離恋愛で電話に話すことがないのは順調な証拠沈黙の使い方

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夜九時。今日もいつもの通話。
今日どうだった?と聞いて、まあ普通、と返ってきて。仕事は?忙しかったよ。ごはんは?コンビニ。
そこまで、たったの八分。
えーっと…と言いながら、天井の隅をぼんやり見てた。しーん、とした通話画面の秒数だけが、無情に増えていく。
やば、話すことない。なんか言わなきゃ
結局、じゃあそろそろ寝よっか、で終わる。スマホを置いたあと、なぜか肩がずーんと重い。
でも遠距離恋愛で電話に話すことがないのは、危険信号でもなんでもない。
むしろ、二人の距離がちゃんと近づいた証拠。焦って話題を探しにいく動きのほうが、関係を削ってる。

目次

話すことがないのは、愛が減ったからじゃない

同棲してるカップルだって、実は何も話してない

一緒に住んでる恋人たちを想像してみて。
一日中べらべら喋ってると思う? まさか。
それぞれスマホいじって、テレビ流して、無言でごはん食べて。会話らしい会話なんて、一日十分もない日、ふつうにある。
なのに誰も不安にならない。なぜかというと、同じ空間にいるから。
遠距離は、そこが決定的に違う。二人をつないでるチャンネルが、音声ひとつしかない。
だから無音になった瞬間、つながりごと消えた気がして、心臓がひやっとする。中身が減ったんじゃなく、通り道が細いだけなんだよね。

あなたは電話を、生放送だと思い込んでる

話題が切れると焦る人って、頭の中でラジオのDJをやってる。
無音は放送事故。何秒も黙ったら、リスナーが離れちゃう。だから必死に喋りをつなぐ。
その採点表、自分で勝手に作ったやつだよ?
恋人は、あなたの番組を聴きにきたリスナーじゃない。同じ部屋でだらけたいだけの同居人。
盛り上げなきゃ、と力んだ通話ほど、切ったあとにぐったりする。
沈黙を事故だと思ってるうちは、電話が仕事になっちゃうの。

会話が尽きる本当の理由は、共有した出来事がゼロだから

毎晩の通話が、いつのまにか点呼になってる

今日なにしてた。ごはん食べた。何時に寝る。
これ、会話に見えて、ただの業務報告だよね。
一緒に暮らしてる二人は、蛇口の水漏れとか、隣の家の犬がうるさいとか、共通の事件を毎日拾える。
遠距離には、それが一個もない。あるのは、別々に過ごした別々の一日だけ。
だから報告し合って終わる。ネタが尽きるのは当たり前で、あなたのトーク力の問題じゃない。
話題がないんじゃなくて、二人のあいだに共通の出来事がないの。ここが本丸。

話題は探すものじゃなく、作るもの

つまり、やることは逆。ネタを絞り出すんじゃなく、共通の出来事を人工的に発生させる。
同じドラマを、同じ夜に、それぞれの部屋で観る。次の日には、勝手に語ることが生まれてる。
同じゲームをやる。同じ本を読む。同じレシピで、同じ晩ごはんを作ってみる。
私がやってよかったのは、二人で同じ映画を同時再生して、通話をつないだまま観るやつ。
彼が変な場面で吹き出す声が聞こえてきて、こっちまでつられる。あれ、ほぼ隣に座ってた。
体験を共有した分だけ、話題は勝手に湧く。探す時間を、作る時間に付け替えて。

毎日電話しなきゃ、が二人を削っていた話

通知が鳴るたび、胃が重くなった時期

白状すると、私は義務化の沼にはまってた。
毎日通話するのが二人のルール。守ってれば安心だと思ってたの。
でも、ある時期から、通話の通知が来るたびに、胃のあたりがきゅっと縮むようになった。
好きなのに、面倒。その事実に気づいた自分が、いちばんショックだった。
ある夜、話すことが尽きて気まずくなって、私は寝落ちしたふりをした。すーすー、と息の音まで作って。最低でしょ、これ(笑)。
数日、それを繰り返した。彼を騙してるのに、罪悪感より安堵が勝ってた。

正直に言ったら、彼が吹き出した

限界がきて、ついに言った。毎日じゃなくてもいいかな、って。
言い終わった瞬間、指先が冷たくなって、返事を待つ数秒が異様に長かった。
そしたら彼、電話の向こうで、ぶはっと吹き出したの。
実は俺も、そう思ってた。でも言ったら愛がないって思われそうで、言えなかった、って。
は?こっちも同じだし!ってなって、二人でげらげら笑った。
お互い、相手のために無理してた。義務でつないだ糸を、二人で必死に握りしめてただけだったんだよ。

沈黙を、使い倒す

つなぎっぱなしにして、別々のことをする

いちばん効いたのが、これ。会話をやめて、通話だけつないでおく。
私は洗い物、彼はパソコン作業。喋らない。
聞こえてくるのは、かたかた鳴るキーボードの音と、水の音と、たまに聞こえるひとりごと。
無理に話題を出さなくても、気配だけがそこにある状態。これ、同棲の再現なの。
言葉でつなごうとするから疲れる。生活音でつながれば、沈黙は事故じゃなくなる。
用がないのに切らない時間って、けっこう贅沢だよ。

頻度を落として、そのぶん濃くする

毎日話すと、報告できるネタが薄く割られていく。今日の出来事が、そもそも一個もない日だってあるし。
三日空けてごらん。喋りたいことが、勝手に溜まってる。
毎日十分の点呼より、三日に一度の一時間のほうが、心の距離はぐっと縮まる。
頻度を落とすことに罪悪感を持たないで。それは冷めたんじゃなく、続けるための調整。
毎日つなぐことを目的にした関係は、だいたい半年でどっちかが息切れする。

報告をやめて、感情と未来を話す

今日なにした、はすぐ終わる。でも、それどう思った?は終わらない。
上司にムカついた話、同僚の変な癖、電車で見かけた変な人。事実じゃなく、そのとき何を感じたか。
もう一つ無限に湧くのが、未来の話。
次に会ったら何を食べるか。行きたい店。いつか住むならどの街か。
実際に会う予定が決まってると、通話はぜんぜん変わる。ネタが尽きないんじゃなく、話す理由ができるから。
過去の思い出と、これからの計画。この二つを持ってれば、今日の報告なんてなくても平気。

電話じゃなきゃダメ、という思い込みも捨てていい

音声メモに切り替えた友達夫婦

遠距離を三年続けて、無事に結婚した友達がいる。
その二人、途中から毎日の通話をきっぱりやめた。
代わりに始めたのが、音声メモを送り合うこと。
朝の通勤中に、今日さ、と一分ぶら下げて送る。相手は都合のいい時間に聞いて、寝る前に返す。
時間を合わせなくていいから、どっちも消耗しない。しかも声だから、文字より体温が乗る。
通話は週に一度、ちゃんと時間を取って。この形にしてから、喧嘩が激減したって言ってた。同時に喋る必要、実はなかったんだよね。

無音の二十分が、心地よくなった日

今の私たちは、通話中に平気で黙ってる。
この前なんて、二十分くらい、お互い何も喋らなかった。
彼のほうから、かたかた、というキーボードの音と、たまに、うーんという唸り声だけ。
私はその音を聞きながら、ソファで洗濯物をたたんでた。
ふと、胸のあたりがあったかくなって、手が止まった。あぁ、この人と一緒にいるな、って。
話すことがない夜を、こわがらなくてよくなったとき、遠距離はいちばん静かに強くなる。
今夜、また無音になったら、切らずにそのまま置いておいてみて。案外、そっちのほうが二人らしい。

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