言った。ついに言った。
好きです、と口にした瞬間、心臓が耳のうしろで鳴ってるみたいだった。
彼は少し黙って、それから、ありがとう、と言った。
穏やかな声だった。目も逸らされなかった。
え、ありがとう? それだけ? 私、なんて返せばいいの
その場では、うん、と笑って終わった。家に帰って、玄関で靴も脱がずに座り込んだ。
好きに、ありがとう、で返された。
断られてはいない。でも、受け入れられてもいない。これはいったい何なの?
ありがとうは、立場を一つも示していない
本来ありえた答えは、三つだった
好きです、と言われた人が返せる選択肢って、三つあるでしょ。
私も好き。ごめん、応えられない。少し考えさせてほしい。
応答、拒否、保留。この三つ。
ありがとうは、そのどれでもないの。
気持ちを受け取ったという事実だけを述べて、自分がどうするかには一切触れてない。
つまり、あなたはまだ、判定材料を一つももらってない状態なんだよ。
言った側だけが、宙に浮く
厄介なのは、負担が片側に寄ること。
彼は、断ってないから罪悪感を持たずに済む。受け入れてもいないから、責任も発生しない。
一方、あなたは、期待していいのか、諦めるべきなのか、どちらの動きもできない。
待つしかない状態に置かれる。しかも、期限のない待機。
これ、彼にとってはノーコストで、あなただけが時間を払い続ける形なの。
優しい言葉に見えるけど、実は残酷な構造だったりする。
ありがとうと返す側
断る覚悟が決まっていない
一つ目。答えが決まってないから、言えない。
あなたのことは嫌いじゃない。むしろ好ましい。でも、付き合う相手として見られるかは、まだ分からない。
その中途半端な状態で、はっきりした言葉を出せないの。
本人としては、嘘をつきたくない、という誠実さのつもりだったりする。
ただ、結果として、あなたを待たせてることには変わりない。
このタイプは、時間をあげると答えが出ることがある。ただし、期限は必要。
傷つけたくないから、言葉を選び損ねた
二つ目。断りたい。でも、断るという行為が苦手。
ごめん、と言えば相手が傷つく。それが怖くて、いちばん角の立たない言葉を選んだ結果が、ありがとう。
悪意はゼロ。むしろ優しさから出てる。
でも、この優しさは、相手を長く宙ぶらりんにする種類の優しさなの。
あなたが待ってる間、彼は、断らずに済んでよかった、と少し安心してる。
そのズレが、あとで大きな痛みになる。
関係を維持したまま、答えを保留したい
三つ目は、少し厳しい話。
はっきり断ると、あなたが離れていく。それは避けたい。
今の距離感は心地いいから、そのまま続けたい。だから、答えを出さずに保留する。
悪意があるとは限らないの。無意識にやってる人も多い。
ただ、結果として、あなたは好意を持ったまま近くにいる人、という便利な位置に固定される。
このパターンは、待っても答えが出ないことが多い。出さないことが目的だから。
本当に嬉しくて、言葉が出なかった
四つ目。これもある。
予想外すぎて、頭が真っ白になった。嬉しさが処理できなくて、とっさに出たのがありがとうだった。
とくに、感情を言葉にするのが苦手な人ほど、こうなる。
だから、ありがとう、イコール脈なし、と決めつけるのは早いの。
ただし、この場合は、その後の行動が必ず変わる。そこで見分けられる。
判定は、そのあとの数日に出る
彼から連絡が来るか、距離が変わるか
見るのは、告白の翌日から一週間くらい。
彼のほうから連絡が来る。今度会おう、と誘ってくる。前より距離が近くなる。
四つ目のパターンなら、必ずこれが起きるの。嬉しかった人は、その気持ちを行動で処理しにくる。
逆に、こちらから連絡しないと何も動かない。会う話も出ない。今まで通り、あるいは少しよそよそしい。
それは、答えを出す気がないということ。
言葉で待つんじゃなく、行動を数日だけ観察する。答えは、そっちに出るから。
あなたの好意を、便利に使っていないか
もう一つ、注意して見てほしいこと。
答えを保留したまま、あなたに甘えてくる場合。
相談してくる。愚痴を聞かせてくる。二人で会うのは続ける。でも、関係の話だけは避ける。
これが続いてるなら、彼は答えを出さない状態を選んでるの。
好意を受け取り続けながら、責任は負わない。その位置が、いちばん都合がいいから。
気づいた時点で、こちらから線を引いていい。待つ必要はまったくない。
私は、ありがとうを半年保留として預かった
いつか答えをくれると思っていた
昔、まさにこれをやられた。
勇気を出して伝えて、返ってきたのがありがとう。あと、嬉しいよ、も付いてた。
私はそれを、前向きな保留だと解釈した。今は答えられないだけで、そのうち気持ちが固まるはずだ、と。
だから、待った。それまで通り連絡を取って、会って、いい子でいた。
彼は変わらず優しかった。だから余計に、望みがあると思えたの。
半年。長かったけど、私の中では、答え合わせを待ってる期間だった。
彼に彼女ができて、答えは出た
終わりは、あっけなく来た。
彼に、別の人と付き合うことになった、と報告された。しかも、普通のトーンで。
その瞬間、喉の奥がざらっとして、うまく声が出なかった。
あとで気づいたの。彼はあの日、答えを出してた。ありがとう、が答えだった。
私が勝手に、それを保留に書き換えて、半年ぶんの時間を足しただけ。
言葉が曖昧だったのは事実。でも、行動はずっと一貫してたんだよね。誘われたことも、進む提案も、一度もなかった。
宙ぶらりんを、自分で終わらせる
期限を決めて、一度だけ聞き返す
やることはシンプル。自分の中で期限を決める。二週間でも、一か月でもいい。
その日が来たら、一度だけ聞く。
この前の返事、どう考えてるか教えてほしい。ダメならダメで大丈夫だから。
このダメならダメで大丈夫、が効くの。相手が断りやすくなるから。
断りにくさが理由で保留してた人は、ここで答えを出せる。
そして、それでも曖昧に濁されたら、その濁し自体が答え。二回目は聞かなくていい。
その場でできるなら、その場で一言足す
もし今、まさにその場面にいるなら、使える一言がある。
ありがとうと返された直後に、軽く聞き返すの。それって、どういう意味で受け取ればいい?と。
気まずいと思うかもしれないけど、そのまま持ち帰るほうが、はるかにしんどい。
その場で聞けば、彼も答えを出さざるを得なくなる。
持ち帰ると、あなただけが何週間も考えることになるでしょ。
聞くのは失礼じゃないの。答えを求めるのは、伝えた人の当然の権利だから。
返事がない状態を、希望として保管しない
そして、これがいちばん大事。
答えが出てない状態は、可能性が残ってる状態に見える。だから、手放しにくい。
でも実際は、動かないまま時間だけが減っていく状態なの。
希望として保管すると、半年でも一年でも保管できてしまう。私みたいにね。
判定は行動で、期限は自分で。この二つを決めておけば、宙ぶらりんは長引かない。
ありがとうから、始まった人もいる
三日後に、彼から連絡が来た友達
友達が告白した時も、返ってきたのは、ありがとう、だけだったらしい。彼女はその場で凍りついたって。
でも、三日後に彼から連絡が来た。あの時うまく言えなかったけど、と前置きして、ちゃんと返事をくれたの。
彼はただ、その場で言葉が出なかっただけだった。
つまり、ありがとうが必ず断りとは限らない。
ただ、その違いは、彼が自分から動いたかどうかに出る。待ってるだけの人と、動いてくる人。分かれ目は、そこだけなんだよ。
