先約って、そんなに強いのか
金曜の夜、電話で来週の土曜どうする?と聞いたら、返ってきたのはこれ。
あ、その日ムリだわ。健太たちと。
一瞬、返す言葉が出てこなかった。私が三週間前から行きたいと言っていた展示、最終日が土曜だったんですよ。
喉の奥が熱くなって、でも声だけは平坦に、そっか、了解、と言った自分がいた。
私が引っかかったのは、日程じゃなかった
展示なんて、正直どうでもよくなっていました。
刺さったのは、彼の即答。迷いがゼロだったこと。予定表を見るまでもなく、健太たちが先。あの反射速度に、私の順位が全部出ていた気がした。
後で聞いたら、その集まりは三日前に決まったものでした。私の希望は三週間前。先約って、そんなに軽い概念だったの?
この時に感じたモヤモヤを、私は数か月かけて分解することになります。
彼が友達を優先する時、頭の中で起きていること
彼女は逃げないという、無自覚の前提
彼の中で、友達との予定は流動的。断ると次がいつになるか分からない。誘われなくなるかもしれない。
一方、彼女は明日もいる。来週もいる。だから調整可能な枠に入れられる。
これ、あなたを軽んじているというより、確実にいてくれると信じきっている状態なんですよ。信頼と甘えは紙一重で、外から見ると区別がつかない。
彼を擁護する気はないけれど、心理としてはこれが一番多い。
男同士の集まりには、期限が設定されている
私が気づくのに時間がかかったのがこれ。
彼の友人グループは、学生時代からの五人。全員が働き始めて、結婚した人も出てきて、集まれる回数が年に数回まで落ちていた。
彼にとってあの飲み会は、消えかけている場所の維持作業だったわけです。
今行かなければ、次はないかもしれない。この焦りは、恋人には見えにくい。私には、ただの飲み会に見えていたから。
断ると格好がつかない、という妙な力学
彼女と約束あるから、と言えない男性、かなりいます。
言った瞬間に、彼女優先の男として弄られる。尻に敷かれてるとか、変わったよなとか。あの空気を回避するために、彼女との予定を後ろに回す。
くだらないでしょ。本当にくだらない。でも、この幼稚な力学が実際に動いていることは、認識しておいたほうが対処しやすい。
私の彼は、後になって、あの時みんなの前で言い出せなかった、と白状しました。三十過ぎた男が、何を怖がってるのって思ったよね(笑)
そもそも優先順位という発想を持っていない
これも実際にあるパターン。
彼の頭の中に、順位という概念が存在していない。誘われた順、思い出した順、返信しやすい順で予定が埋まっていく。
戦略的に彼女を後回しにしているのではなく、その場その場で処理している。だから指摘されても、そんなつもりはなかった、と本気で言う。
悪質さで言えば低い。ただ、放置すると同じことが延々と続きます。
私が最初にやった対処が、完全に裏目に出た話
不機嫌で伝えるという、最悪の手法
展示の件から二週間後、また同じことが起きました。
その時の私がやったのは、露骨に返信を遅らせること。既読をつけて放置。会った時も口数を減らして、どうしたの?と聞かれても、別に、と返す。
分かってほしかったんですよ。察してほしかった。
結果、彼は困惑して、機嫌が悪い日の彼女として処理しただけでした。問題の中身は一切伝わらず、私だけが疲れた。
友達と私、どっちが大事なのと聞いてしまった
極めつけがこれ。言いました。言ってしまった。
彼の顔が、はっきりと引きつったのを覚えています。数秒黙って、それ比べるものじゃなくない?と。
正論すぎて、返せなかった。同時に、私の中の何かがぐしゃっと潰れる音がした。
今なら分かる。あの質問は、どう答えても彼が悪者になる仕掛けです。友達と答えれば冷たい男、彼女と答えれば友達を軽視する男。答えのない問いを投げた時点で、会話ではなく攻撃になっていた。
三か月後、伝え方を変えたら一発で通じた
やり方を変えたのは、限界が来てから。
私が言ったのは、これだけ。友達と会うのは全然いい。ただ、私の予定が後から来た誘いで動くのが嫌なんだよね。
彼、きょとんとした顔で、あ、それはそうだわ、と。
拍子抜けするほどあっさり通った。彼が守っていなかったのは、私との時間の量じゃなくて、決まった予定の扱い方だった。ここを名指しした瞬間に、話が一気に具体化したんです。
どっちが大事、では絶対に届かなかった内容でした。
放っておいていい場合と、動くべき場合の線引き
会っている時の質を見る
判断材料の一番は、頻度ではありません。
会っている時に、彼がスマホを触り続けているか。あなたの話を覚えているか。次に会う日を彼から出してくるか。
月に二回しか会えなくても、その二回で目線が合っていれば問題は小さい。逆に、週三で会っているのに毎回グループLINEを気にしているなら、そっちのほうが深刻でしょ。
予定を動かす方向が、いつも一方通行かどうか
一度でも、友達の誘いを断ってあなたを取ったことがあるか。
ここに一度もイエスがないなら、それは順位が固定されているということ。たまに、ではなく、常に後回し。この状態が半年続いているなら、話し合いの段階に入っていい。
私の彼は、あの会話の後、友人の誘いを断って私との約束を守った日がありました。あれで、順位が固定されていたわけじゃないと確認できた。一回でいいんですよ。一回あれば、信じられる。
あなたの不満を伝えた後の反応
指摘した直後、彼がどう出るか。ここが全てです。
めんどくさ、と言う人。そんなに束縛されたくない、と話をすり替える人。俺の友達関係にケチつけるの?と怒る人。
この三パターンが出たら、友達優先の問題ではなく、あなたの言葉を受け取る気があるかどうかの問題に変わります。議題が入れ替わっている。
彼の友人関係の中身も見ておく
友人と会うこと自体は、健全です。むしろ、友達がいない恋人のほうが後々しんどい。
問題は中身。友人といる時だけ言葉遣いが荒くなるとか、あなたの話を茶化されて一緒に笑っているとか。
私の友人が別れを決めたのは、彼の友人グループの飲み会に呼ばれて、彼が完全に別人だった時でした。彼女いわく、あの場の彼のほうが素だと分かってしまった、と。
順位を上げようとするより、効いたやり方
先に押さえる、を徹底した
一番効果があったのは、これ。単純すぎて笑うけど。
月初に、今月会いたい日を二つだけ出して、その場でカレンダーに入れてもらう。予約制にしたわけです。
彼が友達の誘いを優先していたのは、私との予定が確定していなかったから。空欄には、後から来たものが入る。当たり前の話でした。
確定した予定は、彼はちゃんと守りました。守れないんじゃなくて、確定していなかっただけ。
私も自分の予定を埋めた
これは自分のためのやり方。
彼が友達と会う日、私も友達と会うようにしました。待つ側から降りたんですよ。
最初は意地でした。正直、対抗心。でも三か月続けたら、彼の予定に振り回される感覚が消えていた。
面白いのが、私が忙しくなった時期に、彼から会いたいと言ってくる回数が増えたこと。狙ったわけじゃないのに。人間って、単純すぎない?
彼の友人を、敵として扱わない
やってしまいがちなのが、友達の話が出るたびに嫌な顔をすること。
私もやっていました。健太、という名前が出るだけで表情が固まる。
彼からすると、友人を否定されることは自分の一部を否定されることに近い。あそこで敵対しても、何ひとつ得しなかった。
方針を変えて、健太さんって面白い人だよね、と言うようにした。彼の表情が明らかに緩んだのを覚えています。守る必要がなくなると、人は素直に話を聞くようになるんだよね。
それでも変わらないなら、そこが判断のライン
伝えて、改善して、また戻る場合
一度は直る。二週間くらい。そしてまた元に戻る。この繰り返しが三回続いたら、私はもう変わらないと考えます。
本人に悪気はない。だからこそ厄介。悪意なく繰り返される行動は、その人の標準設定です。設定は、外部から書き換えられない。
あなたが我慢する形で成立している関係
彼女が黙ることで回っている関係は、うまくいっているんじゃなくて、片方が支払っているだけ。
私の知り合いは、五年間ずっと彼の予定に合わせ続けました。別れた後の第一声が、これ。
土曜の予定を自分で決められるって、こんなに気楽なんだ。
五年かけて手に入れたのが、その気楽さ。重すぎる授業料でしょ。
順位が低いことより、変える気があるかどうか
最後に、いちばん伝えたいこと。
彼女より友達を優先する男性が、全員だめなわけじゃない。人には人の付き合いがあるし、そこを削らせる関係は結局長く続かない。
見るべきは順位そのものじゃなくて、あなたの違和感を聞いた後に何かを動かす気があるかどうか。
うちの彼は、あの日以来、グループLINEで予定を出す前に、俺その日どうだっけ?と私に確認するようになりました。地味です。地味だけど、私はあの一言で救われている。
順位を上げてもらう必要はなかった。順位という発想を、二人で作り直すほうが早かったんですよ。
