今度ご飯行こうよ、の今度が来ない
同期の送別会の帰り。
駅の改札前で、隣の部署の彼が言ったの。
「今度ご飯行こうよ」
うん、行こう。
反射で返して、改札を通って、ホームで立ち止まった。
今度って、いつ?
電車が来るまでの四分間、ずっとその一言を反芻してた。
本気なら日にちを言うよね。でも、言わない人もいるし。社交辞令なら、わざわざ改札で言わないよね。でも、別れ際の定型文かもしれないし。
頭の中で、賛成と反対が交互に手を挙げてた。
重い? 軽すぎ? これ待ってる感出てない?
本気か社交辞令かより、返し方で困っている
ご飯行こうが社交辞令かどうか、で調べる人が本当に困ってるのは、その後の一手だと思う。
本気なら乗りたい。社交辞令なら乗ったら恥ずかしい。
判定を間違えると、痛い人になる気がして動けない。
だから返信が書けない。
判定と返信は別の問題なのに、セットで悩むから固まるんだよね。
先に言っておくと、判定は返信の中でやれる。それが一番早い。
社交辞令になりやすい場面と、本気になりやすい場面
別れ際の一言は、挨拶の延長
改札前、エレベーターの中、飲み会のお開き。
場を締めるための言葉として、ご飯行こうは非常に便利なの。
またね、の代わりに使われてる。
本人に悪気はない。
ただ、その場を気持ちよく終わらせたかっただけ。
言った三十分後には、内容を覚えてないことも普通にある。
会話の途中で出たなら、意味が変わる
盛り上がってる最中に、じゃあ今度そこ行こうよ、と出てきた場合。
これは挨拶じゃない。
話題の流れで、具体的な場所や食べ物が出た上での提案なら、その人は本当に行きたいと思ってる。
締めの言葉と、途中の言葉。
タイミングだけで、かなり見分けがつく。
複数人の場で言われたなら、聞き流していい
飲み会の席で、みんなで行こうね、の文脈で言われたもの。
これは全員に向けた言葉だから、個人的な誘いとして受け取らなくていい。
逆に、二人になった瞬間に言われたものは、重みが違う。
周りに聞かれない状況を選んでるなら、そこには意図がある。
相手の性格で、言葉の重さが変わる
誰にでもご飯行こうと言う人。
その人の言葉は、残念だけど軽い。
逆に、普段そういうことを言わない人からの誘いは、たとえ改札前でも重い。
普段の口癖を知ってるなら、そこも材料に入れて。
返信で様子見して、三ヶ月消えた話
行こうね、だけ送って終わった
翌日、結局こう送った。
「昨日はお疲れさま! ご飯行こうね」
返ってきたのは、
「行こう行こう!」
以上。
二人とも、行こう、と言い合っただけ。
日にちも場所も出てない。そこから、何も動かなかった。
彼が具体的に言ってくるのを待って、彼はこっちが言ってくるのを待ってたのかもしれないし、もう忘れてたのかもしれない。
三ヶ月後、社内で見かけたとき、会釈だけして通り過ぎた。
あの話、どこ行ったんだろう
自分でも、どこに置いてきたのかわからなかった。
合わせるだけの返信は、何も決めない
気づいたのは、後になってから。
行こうね、は相手に判断を委ねる言葉なの。
相手も、行こう行こう、で委ね返す。
二人で丸投げし合ってる状態。
社交辞令かどうかを判定してる間に、本気の誘いですら社交辞令に変わっていく。
時間が経つと、どんな言葉も薄まるから。
待ってる側が、いつも損をする
向こうが日程を出すまで待つ、という姿勢は、慎重じゃなくて放棄。
社交辞令だったら恥ずかしい、という理由で動かないなら、本気だった場合の機会も一緒に捨ててる。
彼が本気で、こっちも本気で、二人とも動かなかった。
その組み合わせが一番もったいないでしょ。
返信の中で、本気度を確かめる方法
日にちを二つ、こっちから出す
判定と返信を、一通で済ませる方法がこれ。
「金曜と来週の火曜、どっちか空いてる?」
本気なら、どちらかを選ぶか、別の日を出してくる。
社交辞令なら、また今度、とか、落ち着いたら、とか、曖昧な返しが来る。
一往復で判定が終わる。
選択肢を二つ出す理由は、断りやすさを減らすため。
一日だけだと、その日は無理、で終わる。二つあると、選ばない理由を作るほうが面倒になる。
店を一軒、具体的に置く
もうひとつ効くのがこれ。
「駅前にできたタイ料理、気になってるんだけど」
場所が決まると、話が現実になる。
今度ご飯、という空気のような約束が、タイ料理という質量を持つ。
相手が乗ってくるなら、行きたい気持ちがある。スルーされるなら、なかった。
断られても、こっちの評価は下がらない
ここ、気にしすぎてる人が多い。
具体的に誘って断られたら痛い人、みたいな感覚。
ないよ、それ。
自分から言ったご飯行こうに対して、日程を出してきた相手を、痛いと思う人はいない。
思うとしたら、その人が失礼なだけ。
むしろ、社交辞令で言った側が慌てる。言ったのは自分だから。
恥ずかしい思いをするのは、向こう側なの。
曖昧な返事が来たときの、引き際
また今度、が二回続いたら終了
日程を出して、また今度と返ってきた。
一回目は、本当に忙しい可能性がある。
二回目も同じなら、そこで判定を終える。
三回目を出すのは、追う形になる。
追われた側は逃げる。逃げられた側は消耗する。
二回で見切る、と先に決めておくと楽だよ。
代替案が出るかどうか
断り方にも種類がある。
その日は無理、で終わるか。
その日は無理だけど、再来週なら、と続くか。
代替案が出るなら、断られてない。
出ないなら、断られてる。
断り文句の丁寧さより、次の日程があるかどうかだけ見て。
相手から具体的な話が来たら、すぐ乗る
逆に、向こうから日にちが出た場合。
これはもう、社交辞令の可能性は消えてる。
判定は終わってるから、悩まずに乗る。
ここで駆け引きして、予定確認するね、と先延ばしにするのは、せっかくの本気を薄める行為。
本気の誘いには、本気の速度で返す。それだけ。
後輩リナが、一往復で予定を確定させた例
返信の一行目に、日にちを書いた
同じ状況にいた後輩のリナ。
飲み会の帰りにご飯行こうと言われて、翌朝こう送った。
「昨日ありがとう! 今週の木曜、空いてたりする?」
返信、十分後。
木曜いける、どこ行く?
それだけ。
彼女が特別に押しが強いわけじゃない。日にちを先に書いただけ。
断られる覚悟が、判定を速くする
リナに聞いたの。怖くなかった、って。
彼女の答えは、
「社交辞令だったら、それがわかるだけじゃないですか」
それだけ、なんだよね。
判定が出れば、期待を持ち続ける必要がなくなる。
待ってる三ヶ月より、断られる一日のほうが、はるかに軽い。
改札前で聞いた、今度ご飯行こうよ。
あの四分間のホームで、木曜どう、って送っていたら、たぶん違う三ヶ月になってたんだよね。
今度、を放置しなくなったのは、それからだったんだ。
