深夜0時を少し過ぎた頃。
ベッドの上でLINEを開き、今度ご飯でもどうですか、と打ち込む。
親指が送信ボタンの上で止まったまま、もう何分たったんだろう。
(いや、急すぎるか。重いって思われたら終わりだし)
一文字ずつ消して、画面を閉じる。
これ、今週だけで三回目なんだよね。
こじらせ男子と呼ばれる側の人間が、僕だ。
好きな人の前でだけ、なぜかそっけなくなる。
LINEの返信速度で、相手の気持ちを占ってしまう。
優しくされると浮かれて、次の瞬間には傷つく準備を始めている。
そんな男の頭の中は、外から見るよりずっと騒がしいんです。
こじらせ男子の恋愛は、好きになる前から負けを想定している
笑顔ひとつで舞い上がり、返信ひとつで沈む
彼女が欲しい。
口ではそう言うくせに、本気で誰かを好きになるのは足がすくむ。
ある飲み会で、隣に座った女性が僕の話を笑顔で聞いてくれた。
それだけで、頭の中では勝手にファンファーレが鳴りだす。
(この人、僕のこと気になってるんじゃないか)
翌日、勇気を振りしぼってLINEを送った。
返事が来たのは、数時間後。
たったそれだけの時差で、胃のあたりがずしりと重くなる。
やっぱり、からかわれただけだったんだ。
冷静に考えれば、彼女はただ感じのいい人だっただけ。
返信が遅れたのも、単に用事があったんでしょ。
なのに僕は、好意を感じたそばから失望のシナリオを書きはじめる。
期待と落胆を一人で何往復もして、世話ないよなぁ。
窓口の優しさまで、自分宛てに見えてしまう
もっと恥ずかしい話もある。
とある窓口で、女性のスタッフさんがすごく丁寧に対応してくれた日のこと。
(まさか、僕に気があるのかも?)
本気で一瞬、そう考えた。
仕事だよ!それが彼女の仕事なんだって(笑)
気になる人が髪を切ってきたときも同じ。
服の雰囲気が変わっただけで、僕のためかなと期待してしまう。
何もないとわかると、今度は心の中で、気を持たせやがって、と毒づく。
書いているだけで、背中に変な汗がにじんでくるわ。
相手は何もしていない。
僕の願望が、ふつうの行動をねじ曲げて見せていただけなんだよね。
好きな人の前でだけ冷たくなる、こじらせ男子の不器用な防御
ほかの人とは話せるのに、あの人の前でだけ口が固まる
職場でも飲み会でも、ほかの人とならわりと普通にしゃべれる。
ところが好きな人が輪に加わると、僕の口は急にシャッターを下ろす。
話しかけられても、うん、そうなんだ、で終わり。
目が合えば、反射的にそらしてしまう。
本当はもっと一緒にいたいのに、じゃあね、と自分から席を立つ始末。
帰り道は、ひとり反省会。
はぁ…なんで普通にできなかったんだろう。
あそこで何か質問していれば、会話は続いたのに。
電車の窓に映る自分の顔が、やけに情けなく見えたっけ。
好きがバレる恐怖が、相手には拒絶に映る
なぜ、わざわざ冷たくするのか。
答えは単純で、好きだとバレるのが怖いから。
バレたら最後、相手に判断をゆだねることになる。
断られる未来が、急に現実味を帯びてくるんだよ。
最初から興味のないふりをしておけば、傷は浅く済む。
こじらせ男子の脳内では、そんな計算が一瞬で走っている。
でも、相手から見たらどうだろう。
ほかの人には笑うのに、自分にだけそっけない男。
嫌われてるのかな、と思われて当然じゃん。
好意を隠すほど、相手を混乱させて遠ざけていく。
守っているつもりで、自分の恋を自分で壊してるってわけ。
LINEひとつで物語を作る、こじらせ男子の頭の中
既読から返信までの空白に、勝手に意味を書き込む
ピコン、と通知が鳴るたびに、心臓が跳ねる。
既読がついたのに返事がないと、何度も画面をのぞいてしまうんだ。
短い文章が返ってくれば、冷めたのかなと勘ぐる。
予定が合わないと言われた日には、後回しにされたと受け取って終わり。
事実はたぶん、相手が忙しかっただけ。
それなのに僕の頭は、空白を埋めるように悲しい物語をつむぎ出す。
しかも、結末はいつもバッドエンド。
自分の不安を相手の行動に貼りつけて、答え合わせもせずに沈んでいく。
これが、こじらせ男子のいちばん厄介な癖。
デートの誘いは、送信ボタンの手前で消える
冒頭のLINEの話に戻るね。
好きな人を誘おうと、何度も文章を打っては消す。
もし断られたら、が頭の中で何十回もリピートされる。
結局、一通も送れないまま朝が来る。
運よく会えた日もあった。
その場では、ちゃんと楽しく話せているんだ。
なのに別れ際、口から出るのは、また連絡するね、だけ。
次の約束も、好きの一言もない。
僕は慎重に進めているつもりだった。
でも相手からすれば、本気なのかどうか、まるで読めない男だったはず。
こうして宙に浮いたままの関係が、またひとつ増えていく。
こじらせの根っこにある、過去の小さな傷
一度の勘違いが、警戒のスイッチを入れた
僕がここまでこじれたのには、きっかけがある。
昔、優しくしてくれた人がいた。
僕はそれを好意だと思い込み、勝手に期待して、勝手に傷ついた。
相手は何ひとつ悪くないのに。
それ以来、誰かに好意を感じると、頭の中で警報が鳴るようになった。
また同じことになるんじゃないか。
この人は本気なのか。
優しい言葉をかけられれば、頬は素直にゆるむ。
でもすぐに、気を持たせているだけかも、と疑いはじめる自分がいる。
普通に接してくれているだけの相手に、特別な意味を探してしまう夜もある。
好きになりたい。
でも、傷つきたくない。
この二つが、同じ胸の中でずっと綱引きをしている。
別れたあとも、夜になると指がスマホに伸びる
付き合えたとしても、こじらせは終わってくれない。
別れた元恋人が、ほかの誰かと楽しそうにしているのを見かけたことがある。
胸のあたりがザワッとして、気づけば歩く速度が落ちていた。
(やっぱり僕が一番だったはずなのに)
誰に聞かせるでもない言葉が、喉の奥で渦を巻く。
昼間は、忘れたつもりでいられる。
でも夜になると突然会いたくなって、スマホを開いては閉じる。
連絡しかけて、送信の寸前で指を止めたことも一度や二度じゃない。
手放したくない気持ちと、もう戻っちゃいけないという気持ち。
両方が本物だから、布団の中で寝返りばかり打つはめになるんだ。
炎上覚悟で言う、こじらせ男子に駆け引きは逆効果
勘違いさせた女性に、責任は一ミリもない
まず、自分も含めた男たちに言わせてほしい。
気を持たせやがって、と思った時点でアウト。
優しく接するのも、髪型を変えるのも、相手の自由だから。
そこに勝手に意味を乗せて、裏切られたと騒ぐのは、完全にこっちの問題。
被害者ぶるこじらせは、ただの甘えでしかない。
過去の僕を、正座させて説教したい気分(泣)
押して引くより、言葉でまっすぐ渡してほしい
次に、こじらせ男子が気になっている女性へ。
押して引く駆け引きは、僕らには逆効果です。
少し連絡を控えられただけで、やっぱり嫌われた、と結論を出してしまう。
そして、自分から静かにフェードアウトしていく。
あなたが一歩引けば、こっちは三歩逃げる生き物なんだよ。
響くのは、拍子抜けするほどストレートな言葉。
また会いたい。
この前、すごく楽しかった。
次はいつ空いてる?
疑う余地のない一文さえもらえれば、こじらせ男子は意外と一気に動ける。
女性に勇気を借りる形になるのは情けない。
でも正直言って、それが僕らの現実。
それでも、こじらせ男子は一途だと言い切れる
散々な話ばかり書いたけど、こじらせ男子をすすめたい理由もある。
ひとつの返信で何時間も悩むのは、それだけ相手のことを考えている証拠。
遊びの恋を器用にこなせない分、心を開いた相手には驚くほど誠実だよ。
(自分で言うのもどうかと思うけど)
一度安心を手に入れたら、よそ見をする余裕なんてない。
不器用な分だけ、まっすぐなんです。
そっけないのは脈なしじゃない、でも待ちすぎなくていい
こじらせ男子の脈ありサインは、慣れてしまえば案外読みやすい。
ほかの人には普通なのに、あなたにだけぎこちない。
目が合うとすぐそらすくせに、気づくとまた視線を感じる。
LINEは短いのに、なぜか必ず返ってくる。
このあたりが揃っていたら、その冷たさは好意の裏返しと見ていい。
ただし、まっすぐな言葉を渡しても、いつまでも一歩を踏み出してこないなら。
そのときは、待たずに離れて構わない。
こじらせを言い訳にして、相手の時間を食いつぶしていい理由なんて、どこにもないから。
こじらせたままの僕が、今やっていること
事実と妄想を、メモの上で切り分ける
偉そうなことを書いたけど、僕もまだ抜け出せていない。
事実と妄想を分けようと決めても、夜になればまた同じ考えに引きずり込まれる。
だから最近は、スマホのメモに書き出すようにしている。
既読から三時間、返信なし。
これが事実。
嫌われた、冷めた、ほかに好きな人がいる。
これは全部、僕の想像。
並べて眺めると、事実の行だけがやけに短い。
完璧に効くわけじゃないけど、夜中に暴走する回数は確実に減った。
もうひとつ、夜に大きな判断はしない。これも自分との約束。
一文だけでいいから、本音を先に置く
好きなのに近づけない。
近づきたいのに、足が止まる。
外から見れば、僕はただの煮え切らない男でしょう。
でも頭の中では、ずっとその人のことを考えている。
あの時、送れなかった一文がある。
今度、ご飯でもどうですか。
たったそれだけの言葉を、今夜こそ消さずに残しておく。
親指が震えても、まあ、それはそれで。
