そういうところ好きと言われた時の目的語はあなたじゃない

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なんてことない会話の途中だった。
私が、たいして面白くもない意見を言っただけ。
そしたら彼が、笑いながら、そういうところ好きだわ、と言った。
一瞬、時間が止まった。頬のあたりが、ふわっと熱くなる。
え、今、好きって言った? 言ったよね?
その日から数日、私はその一言を頭の中で何度も再生した。あの言い方、あの間、あの表情。
そういうところ好き、と言われた。
告白なのか、ただの褒め言葉なのか。

目次

その好きは、部分に向けられている

告白の好きは、目的語が人になる

比べてみると、はっきりする。
あなたが好き。これは、目的語が人。全体を引き受ける言い方。
そういうところが好き。目的語は、属性。あなたという写真の中から、一部だけを切り抜いて、それを褒めてる状態。
どっちも好きという単語は入ってる。でも、指してる対象がまるで違う。
だから、告白としては成立してないの。彼は、あなたを選ぶとは一言も言ってない。
ここを混ぜたまま期待すると、あとで着地点を見失うことになる。

ただし、脈なしとも限らない

と言っても、がっかりしないで。この言葉、脈がある人も普通に使うから。
考えてみて。あなたが好き、と言うのは怖いでしょ。断られる可能性を、まるごと引き受けることになる。
その怖さを避けつつ、好意をにおわせたい時、この形はとても便利なの。
部分の話にしておけば、後から、そういう意味じゃないよ、で引き返せる。
つまり、これは告白の代わりじゃなく、告白の手前で出される観測気球のことがある。
問題は、その気球がそこで止まるのか、次に進むのか。

判定は、範囲が広がるかどうか

部分から全体へ、言葉が移動していくか

ここが今回いちばん大事なところ。
最初は、そういうところ好き、だったのが、しばらくすると変わってくることがある。
一緒にいると楽しい。〇〇といると落ち着く。会うと元気になる。
気づいた?目的語が、ところ、から、あなた、に移動してるでしょ。
この移動が起きてるなら、それは告白に向かって助走してる状態。
逆に、何か月経っても、そういうところ好き、から一歩も動かないなら。それは好意じゃなく、評価として固定されてる。

切り抜きが増えても、写真全体にはならない

気をつけてほしいのが、回数に惑わされないこと。
そういうところ好き、を何度も言われると、たくさん好かれてる気がしてくる。
でも、切り抜きを十枚集めても、それは写真全体を見たことにはならないの。
彼が見てるのは、あなたの中の使いやすい部分、話しやすい部分、心地いい部分。
それ以外の面倒な部分や、弱い部分まで含めて引き受ける話には、まだなってない。
回数じゃなく、範囲。数えるなら、そっちを数えて。

何に対して言われたか、を思い出す

具体を言える人は、ちゃんと見ている

一つ、簡単な見分け方がある。
その、そういうところ、が何を指してるか、彼は説明できる?
人の話をちゃんと最後まで聞くところ、とか。どうでもいいことで本気で笑うところ、とか。
具体が出てくるなら、彼はあなたを観察してる。見てないと、そんな細部は言えないから。
一方、なんとなく、全体的に、と曖昧なままなら、それは口癖の可能性が高い。
場を和ませる言葉として、誰にでも使ってる人もいるからね。

都合のいい行動の直後だけ出るなら、それは報酬

ここは、少し怖い話をする。
思い出してみて。その言葉が出るのは、いつ?
あなたが譲った時。文句を言わずに合わせた時。彼の面倒を引き受けた時。予定を彼に寄せた時。
そのタイミングにばかり集中してるなら、それは褒め言葉として機能してない。ご褒美として機能してる。
言われると嬉しいから、あなたはまた同じことをする。そして、また言われる。
悪意なくやってる人もいる。でも、結果として、あなたが都合よく動く仕組みが完成しちゃうの。

私は、部分点をもらい続けて三年いた

言われるたび、その行動を増やしていた

白状すると、私はこれに完全にはまった。
その人は、私が気を利かせた時に、決まってこう言うの。そういうとこ、ほんと好きだわ、って。
言われると、嬉しかった。だから、もっと気を利かせるようになった。
彼の予定に合わせて、彼の好みを覚えて、言いたいことは飲み込んで。
その全部に、そういうところ好き、が返ってくる。私はそれを、好意の蓄積だと思ってた。
今なら分かる。私は褒められてたんじゃなくて、育てられてたんだよね。

三年後、彼が別の子に言った言葉

終わりは、あっけなかった。
彼が、別の女性と付き合うことになった。私が知らない子。
共通の友達から聞いた話がきつくてね。彼はその子のことを、あの子が好きなんだ、と言ってたらしいの。
好きの目的語が、ところ、じゃなく、人になってた。
それを聞いた瞬間、喉の奥がきゅっとなった。三年ぶんの部分点が、一気に無効になった感じ。
私は加点をもらい続けてたけど、合格ラインには一度も乗ってなかったの。

確かめ方と、返し方

どういうところ?と、その場で聞き返す

実践編。言われたら、その場で軽く聞き返してみて。
どういうところ?と、笑いながら。
ここで具体が返ってくるなら、彼はあなたを見てる。しかも、その説明の内容で、彼が何を評価してるかも分かる。
言葉に詰まったり、なんとなく、で流したりするなら、その一言は深く考えずに出たもの。
聞き返すのは、重くもないし失礼でもない。むしろ、会話としても自然でしょ。
判定材料が、一往復で増えるんだから、使わない手はない。

あなたも同じ形で返して、反応を見る

もう一つ、面白い確認方法がある。
あなたも、同じ形で返してみるの。私も、そういうところ好きだよ、と。
そこで彼がどう反応するか。嬉しそうにするか、照れるか、それとも急に話題を変えるか。
避けたり、冗談にして逃げたりする人は、その言葉を恋愛の文脈で使われるのを警戒してる。
つまり、彼の中では、これは恋愛の言葉じゃなかったということ。
受け取るだけじゃなく、投げ返してみると、輪郭がはっきりするよ。

期待の置き場所を、言葉から行動に移す

最後は、いつもと同じ結論になる。
その言葉に、これ以上の意味を足さないこと。
見るのは、彼が日付を出してくるか。二人で会う時間を作るか。あなたの都合に合わせて動くか。
好きという単語は、口から出るだけならタダなの。でも、予定を作るには手間がかかる。
言葉が増えてるのに、予定が増えてない。その状態が続くなら、判定は出てる。
言葉を数えるのをやめて、カレンダーを見る。それだけで、余計な夜が減るから。

部分から、全体に移った人

言葉の目的語が変わった日

友達の話を置いておくね。
彼女も、気になってた人から、そういうところいいよね、と何度か言われてたらしい。
最初は判断がつかなくて、モヤモヤしてたって。
変わったのは、四か月くらい経った頃。彼が、ふいに、〇〇と一緒にいるのが好きなんだよね、と言った。
その瞬間、彼女は、あ、変わった、と思ったらしい。ところ、から、一緒にいること、へ。
その一か月後に、ちゃんと告白された。範囲は、本気なら勝手に広がっていくの。

額縁に入っているのは、切り抜きか、あなたか

そういうところ好き、と言われた嬉しさは、そのまま持っていていい。
誰かがあなたの一部を見つけて、いいねと言ってくれたんだから。それは本当の出来事。
ただ、その一言を告白として保管しないで。
見るのは、その好きが、部分から全体に向かって動いていくかどうか。
彼の額縁に入ってるのが、切り抜きのままなのか、それともあなたごと収まる日が来るのか。
次に同じことを言われたら、笑って一言だけ聞いてみて。どういうところ?って。

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